真空ポンプのガスバラストバルブについてその役割と具体的な効果量

今回は真空ポンプの大気中水分の処理方法、実質ガスバラストバルブについてになります。
また、機種依存の内容もあるのでご注意ください。私が所有する真空ポンプはエドワーズのRV8です。RV8以外にもついてる機種は多数あります。ていうかわりとだいたいついてるはずです。

・大気中に水分が含まれることの問題
平たく言うと湿度が高すぎる場合、真空排気した際にポンプ内に水分が残る場合があります。大気中には水分が含まれています。真空ポンプは排気する際に圧縮し、その結果真空ポンプ内に凝集液が集まる可能性があります。
※凝集液はオイルに混ざり、オイルを劣化させます。

・トラップ
腐食性蒸気または大量の凝縮性蒸気を排気する場合、ポンプへの接続ラインにコールドトラップを使用することを検討します。腐食性蒸気によるポンプ内部の損傷およびオイルへの混入を防ぎます。コールドトラップは空気を冷やして空気内に含まれる水蒸気や有機溶剤を濃縮、分離します。一般的に使用される冷媒は、液体窒素またはドライアイスとアセトンです。使用される冷媒は、汚染物質の凝固点によって異なります。悲しいことに有機溶剤は液体窒素じゃないと無理です。

という訳で水蒸気の対策として考えられるのがトラップです。さきほどのコールドトラップ以外にも色々な種類のトラップがあります。後述のガスバラストバルブ機能がない場合、真空ポンプは水蒸気に対する耐性が無いのでこのようなトラップを用いて対策する必要があります。ガスバラストバルブがあっても補助で使う場合もあります。間違いなく、真空排気速度は落ちるのとお値段がするのが悩みどころです。

・ガスバラストバルブ
真空ポンプにはガスバラストバルブがついてるものがあります。この機能によって真空ポンプの水蒸気耐性を高めることが可能です。逆に言うとこの機能が無い場合、真空ポンプは少量の純水蒸気でも移動できません。ガスバラストバルブを有効にする(ガスバラストバルブを開く)と水蒸気耐性は上げられますが以下のようなデメリットも存在します。
・到達真空度が悪化する
・動作温度が上がる
・オイルの消費量が増える
しかし、これらは真空脱泡機として運用する上では無視できるレベルの問題です。ガスバラスト弁全開でも一桁Paまで到達できます。

※ガスバラストは全ての化学蒸気の凝縮低減に有効とは限りません。また、オイルの温度が高いほうが効果が高いそうです。ULVACだと20分動かして温度を70℃ほどにしろと書いてあります。ガスバラストバルブを開いてから運転するほうが油温が高くなるそうです。20分は長いですがいずれにせよ真空ポンプは暖機運転してからの使用をおすすめします。冬場はオイルが固まって始動しない場合すらあります。RV8はそのような場合オートで何度か始動を試みる動きがありました。

※ガスバラストバルブはオイルに溶け込んだ水蒸気を取り除く効果もあります。心配な場合は空運転してから使用を終えるようにすると良いです。
また、RV8では使用後はガスバラストバルブを閉じておくことが推奨されています。

・ガスバラストバルブの効果
RV8はガスバラスト閉、開(弱),開(強)の3つのモードが選べます。ガスバラスト強の場合、 0.22kg/h 、弱の場合 0.06kg/h とマニュアルに書いてあります。ガスバラスト強の場合一時間で220gまでの水分は許容できるということです。

では、通常の大気に含まれる水分はどれくらいでしょうか?
[水蒸気量 計算]
とかで調べると計算してくれるサイトなどが出ます。

温度[℃]、圧力[hPa]、相対湿度(通常想像しる湿度[%])などから絶対湿度[g/m^3]を求めましょう。絶対湿度[g/m^3]は空気1000Lに含まれる水分量になります。

現在の値で算出してみましょう
温度 19.2℃
湿度 41%
の場合、6.764[g/m^3]となりました。

今、1000Lの容積のチャンバーの蓋を閉じて真空引きした場合、6.7g程度の水分がポンプに入ることになります。RV8のガスバラストバルブ弱でも60g/hの処理能力があります。1g/mの処理能力なので6.7分未満でこのチャンバーをおおよそ排気できた場合は処理能力を超えます。ポンプの排気能力は160L/mです。160Lに含まれる水分量は1.07g程度です。ガスバラスト弱の処理能力とほぼ同等なので今ならポンプに何も繋がないでガスバラスト弱で動かすとポンプに入る水分量とガスバラストの処理能力がほぼ均衡します。なお、何も繋がないで排気し続けるのはわりと負荷の高い動作なのでやめたほうがいいです。

では私の環境で計算してみましょう。
チャンバー容積 48Lとした場合、水分量は0.32g程です。ガスバラスト弱の処理能力 1g/m なのでガスバラストによる水蒸気への対処は約20s以上の運転が必要になります。計算では10kPa(大気圧の1/10)に達するまで47sかかりますのでガスバラスト弱でも大丈夫そうです。

実際の複製では22L程度を40s程引きます。0.15gの水分量に対して40sの処理能力が0.66gなので十分対処できてそうです。

※RV8は説明書にこのような情報が載っています。産業用の機種は流石に違いますね。

・水蒸気の季節、夏
大気中の温度が高いほど空気が含むことができる水分量が増えます。(飽和水蒸気量が増える)日本の夏は温度が高く湿度も高い高温多湿になります。高い時は70~80%になるそうです。なので最悪の条件として夏場を検討しましょう。悲しいことに私の作業場はケチってエアコンが無いので温度は高くなります。

温度 35℃
湿度 80%
の場合、31.666[g/m^3]となりました。今のおよそ6倍の水分を含んでいます。

実際の複製で考えると22L中の水分は0.7g、先程も書いたとおりガスバラスト弱で40sの処理能力が0.66gなので若干アウトです。ですが、ここまで最悪の条件でもガスバラスト弱でおおよそカバーできる事がわかりました。説明書にもガスバラスト(強)はそうそう使わないみたいに書いてあったのですが納得です。

・蒸気を発する物体に対する真空排気
今までは大気を真空排気することを前提とした話でした。大気を排気する場合はガスバラスト弱で十分なのがわかりました。しかし、真空脱泡機で使用する場合は話が異なります。有機溶剤は放っておいても水より早く揮発します。さらに状況は悪くなり、真空脱泡を行う場合レジンは発熱、大気圧の低下の両面から沸騰へと向かいます。なので間違いなく通常の大気よりも多くの蒸気、この場合揮発した有機溶剤を含んだ気体を排気することになります。

沸騰する際は液体内部からも液相から気相への相転移がおこるので蒸発量は通常を遥かに凌ぐと思います。なので真空脱泡機でレジンなどを扱う際はガスバラストバルブを最大開放したほうが良いと思います。

ちなみにガスバラストバルブ(強)の場合 220g/h => 3.6g/m なので流石に1分で3gも減っててもOKなら能力的に大丈夫な気がします。
強はかなりのオーバースペックに感じますね。

・真空排気の時間について
以前の記事で「真空排気の時間は40sとする」と書きました。これは、レジン混合して液体=>個体になる時間を考慮しての数値です。なので混合してからの硬化時間が長いレジンなら真空排気の時間は多く取れます。

レジンには120s硬化や180s硬化といったものが販売されていますが、この時間をあまり鵜呑みにするのは危険です。温度による化学反応なので雰囲気温度にも左右されます。なので真空脱泡する際はコップに注いで今の硬化時間を見たほうがいいと思います。コップに注ぐと一つの大きな塊になるので一気に発熱してその熱が全体に伝わるので同じ量でも型に流すより早く硬化するはずです。なので最悪値的な参考になります。

私は以前までウェーブのアイボリーノンキシレン(180s)を使用していました。ちょっと前に里見デザインのホワイト(180s)に変えたところ明らかに硬化速度が落ちたことを実感しました。ちゃんとした比較はしてないのですが、ウェーブの気分で型をあけるとまだ柔らかかったりして倍位の時間を待つようにしました。生産性は悪くなりますが、気泡への対策としては良い傾向です。

今、ためしにテストしたところ(19.5℃)36gの硬化時間が約5分ほどかかりました。明らかに長いので納得の結果です。ちょくちょくマドラーで触ってたのですが3分強までは粘性の違いも感じられませんでした。
こうなると真空排気できる時間は最低でも2mほど取れそうです。真空排気時間を長く取りたい方は里見のレジンをおすすめします。

・RVシリーズについて
エドワーズのRVシリーズは200Vで動くものとか色々ありますが型番から判別できます。
A 65X-YY-ZZZ
X: 型。RV8は4
YYY: モーターの種類。
904 = 100/200V,50/60Hz Single-phase
906 = 110-115/120V 50/60Hz Single-phase
です。このどちらかであれば普通の家でも動かせるはずです。

以上になります。真面目に書いちゃった!ヤバイですね☆

2021/04/19 追記
真空ポンプのプロの友達からガスバラストバルブの効果は油温50℃と70℃で倍位差があったり、導入するガスの湿度で変化したりするそうなので梅雨の時期は効果半分と見たほうがいいと教えていただきました。だからといってガスバラストを全開にして半日も運転させるとオイルが半分くらい減ってミストトラップが速攻でヘタって最悪オイルミストトラップからオイルだぱぁするそうです。つら・・・・本格的に使用する前はガスバラストOFFで暖機運転 + 適宜オイルチェックしてオイル白濁時に水抜き運転などがおすすめのようです。

ガスバラストバルブが思ったよりオイルを消費しそうなのは分かりましたが私のようなフィギュアを複製する人間は実際の稼働時間はかなり短めなので要所で使っていけばいいと思います。また、他にもレジン複製で真空脱泡機を運用してるとレジンがポンプ内でひじきみたいに固まってそのうち死ぬとかいう発言もネットで見ました。やはりレジン複製の真空脱泡時はガスバラスト全開にしたほうがいいのではないかと・・・・難しいですねぇ~

とりあえずマメにオイル交換すればどうにかなりそうな気もします。1作品フィギュア複製したらオイル半分交換とか?あと、最低でも月イチくらいで電源いれたほうがいいとか・・・オイルかたまりそうですしね~


私に真空脱泡機が舞い降りた!!(第2部)

・真空脱泡機を組んでみた!
・真空脱泡機を作るのに実際に使用したもの全て。
・ためして実験!!

第1部では真空についてとか真空を引くための時間の計算とかのお話をしました。本当に脱泡機を組むだけなら第2部だけみればできるかと思います。

●真空脱泡機を組んでみた!

用意するもの

・デシケータ:V-3P(48L)
・ポンプ:エドワーズ RV8
・その他配管
というわけでここからは私の所有するRV8において配管などの細かいパーツの選び方についてです。

・配管
大変に面倒なのはここもです。2つのプランを用意しました。RV8は吸入口がNW25という規格なので普通のチューブ配管を使用しない方法もあります。私はその方法を選びました。普通にチューブを使用する方はPLAN Bを参考にしてください。

PLAN A
planA

NW25 フレキシブルチューブを使用する方式です。ちょっと高いけど配管も太いし溶剤耐性も高いはずです。チャンバーの取り付け口が細いのが残念で仕方がないです。あと、調べてすぐ出たのも高ポイントです。
ebayを使うともう少し安く抑えられそうですがう~む・・・納期と信頼性を天秤にかけて頼みたいかといわれるとNoだったのでモノタロウで調達しました。

NW25センターリング&クランプ(\2000)
NW25フレキシブルチューブ(\7990)
NW25センターリング&クランプ(\2000)
継ぎ手(メスネジ用)  ALF-1/4-U25A (\7,880)
Rc1/4 to G1/4 変換ジョイント TA271CA-22(\1390)
計 21,056

PLANB
planB
普通の配管チューブを使用します。配管はクソややこしくてブチギレそうでした。テーパーネジと平行ねじがあるのですが表記が新旧入り交じってるしぐぬぬ・・・・

NW25センターリング&クランプ(\2000)
継ぎ手(メスネジ用)  ALF-1/4-U25A (\7,880)

ホースニップル Rc1/4 寸法D 10.5Φmm、HN-7210 (\569) [10.5 mm]

ホースクランプ(\100)
クニロン真空ホース 内径×外径 9×24(Φmm)、1巻(1m) (\2000)
ホースクランプ(\100)

ハイカプラ(プラグ)ホース取り付け用 30PH (\250)[11.3 mm] トラスコ品番113-0251

ハイカプラ(ソケット)相手側取付サイズ R1/4(PT1/4) 20SF(\699)トラスコ品番113-2504

Rc1/4 to G1/4 変換ジョイントTA271CA-22(\1390)

計 12,598

ふむふむ・・・・あれ?普通の配管あんまし安くない・・・・ていうかパーツ多くて面倒。というわけでPLAN Aで行きます。配管長が50cmしかないですけど短い方がベターなのでOKです。
PLANB調べるのクソめんどくさかったのに使わんし・・・・普通のチューブを使う人もこれを参考にしてみてください。合ってるかわからないけどたぶん大丈夫です。。。。。

・その他
配管の他に必要な物を挙げていきます。

必須
・シールテープ

・ポンプオイル
純正品:ウルトラグレード19 4L \6990

・オイル廃棄箱

オプション
・ポンプの台座

・ エースクロス
詰め物の発泡スチロールに巻きます。

★追加のもの
後述しますがデシケータに備え付けのバルブを交換しました。これによりデシケータから出るのがRc1/4になったので Rc1/4 G1/4変換ジョインとは不要になりました。南無。

追加購入物
・アソー 六角ニップル NT-1022 119*3
・パーカーハネフィン 中圧イコノボールバルブ 1,190*2

ニップルは内径を気にします。このサイズのニップルでは最大の内径だと思います。最小直径8mmになります。バルブはボールバルブです。これも内径を気にします。この製品は10mmです。バルブはクルクル回すやつよりハンドル型のが楽でした。他のを買うにしてもフルボアというのを選ぶと良いです。径が太いので。

●真空脱泡機を作るのに実際に使用したもの全て。
まとめです。要らなくなったやつとか省いています。

planA2
・メイン
ポンプ:エドワーズ RV8 27,280
デシケータ:V-3P(48L) 45,000

・配管
NW25センターリング&クランプ x2セット (\2000 * 2)
NW25フレキシブルチューブ(\7990)
継手(メスネジ用)  ALF-1/4-U25A (\7,880)
アソー 六角ニップル NT-1022 (\119*3)
パーカーハネフィン 中圧イコノボールバルブ (\1,190*2)

・その他
ウルトラグレード19 4L \6990
カクダイ シールテープ 5m テープ幅8mm \129

発泡スチロール板 60倍発泡 450×450×厚さ50mm \616
発泡スチロール 100×60×210 (12) ¥3,480
光洋化学 気密防水テープ エースクロス アクリル系強力粘着 片面テープ 011 黒 50mm×20M \500*2
透明シール キッチンシート 40CM×5M 剥がせる中粘度 ¥1,295 ←低粘度でよかったかも

TRUSCO(トラスコ) ルートバンメッシュタイプ 370×500 4輪自在 S付 黒 MPK-500JS-BK ¥3,325
TRUSCO(トラスコ) 75パイ/100パイキャスター用車止め”とめたろう” 2個1組 CH75100-2S ¥631

計 112,353

※注意事項
オイルミストトラップ
NW25エルボ
はポンプに付属していました。エルボも地味に重要なのであって助かりました。

・後悔したこと
排気管の最小内径がニップルの8mmになりました。チャンバーのねじ切りは変えられないのですがフルボアのバルブが10mmだったのでもう1サイズ上げればもう少し太くできたかもしれません。後述しますが内径は重要です。

・まとめ
デシケータが安いのはわかっていましたがポンプ本体も今思うとかなりお得ですね。NW25のエルボとオイルミストトラップは高いのです。ただ、配管とかその他オプションも含めるとその倍かかってますね。デシケータが既製品の鍋型なら10万切れそうです。3Dプリンタや外注での複製費用を考えると意外と安いと言えるのではないでしょうか。

●ためして実験!!

ドキドキ実験タイム!ダヴィンチ!!

何度も書いてるけどおさらい

・ポンプ:140L/m
・デシケータ:48L
真空到達予測時間
10kPa 47s
1kPa 98s
です。

結果は!!!!

D E A T H

すいませんが正確な値はとってなかったんですがおおよそ予想の倍近い時間がかかりました。
OMG!!でもこの結果に至った理由はすぐわかりました。何故なら大気開放する際に 約40秒?←もうちょいかかってたかも もかかる。
お、おう・・・・大気開放おっせぇ・・・・まぁデシケータですし用途が違いますからね。
つまるところ弁の口径が不足しているということです。
先程のパーツリストで弁を変更してたと書いていたのはこういうことです。

弁

右がデシケータ付属品です。え?ほっそ・・・・・
なんと直径2mm程度しかありません。断面積はπr^2なので半径5mmにできるなら断面積は25倍だね!!
流石に弁を変更。だけでは終わらん!デシケータの穴も若干細い!!

デシケータ穴

というわけでインパクトドライバーを用いて10mmの穴に拡張しました。正直怖かったです。間違ってもネジ山潰しちゃだめだゾそんなこんなでパーツ変更して最小径8mmとなりました。

———-再テスト————
成功!!!!

温度:21℃
湿度:40%
5分間の暖機運転後計測

48L 詰め物なし
50kPa :12s[14.5s]
10kPa :44s[47.6s]
5kPa :57s[63s]

22.4L 詰め物あり
50kPa :6s[6.7s]
10kPa :20s[22.2s]
5kPa :27s[29.4s]
振り切れ(1kPa):44s[46s]

※[]内は予測値

だいたい計算通りになりました。なお、ブルドン管真空計は誤差を含みますがそれでもおおよそ合ってると言っていい結果だと思います。
ここまで当たるならこの計算は使用するに値します。流石や・・・・・

さて、「わーい!やったー!」と言いたいところですが少しだけ問題が残っています。
配管抵抗です。
残念ながら配管抵抗の計算はむずそうです。めんどくさくなったわけじゃないです。じゃないです。ちょっと調べた感じ

・基本的に太くて短いのが正義
・ポンプを無限に強くしても配管径(配管抵抗)によって律速される
・できれば最低直径10mm欲しい

直径2mmの時の概算は無かったんですがやべぇくらい抵抗上がりそうな感じでした。そもそもRV8の配管はNW25,つまり基本的に直径25mmを想定しています。なので8mmで性能が出るかはかなり不安でしたがなんとかなりました。どうやら高真空になるほど径が太くないと性能が出なさそうですね(適当)

うおぉぉぉぉ!!ポンプ2台!!「1+1で200だ。10倍だぞ10倍!!」とか言ってポンプ増やしても
配管が細いといい感じに性能が上がらない可能性が高いです。ていうか大気開放より高速には真空引けないのではないかな~~~とか。

 まぁ何がそんなに心配なのかというとみんな大好きBBKの真空ポンプです。やっぱ新品や!!とか言うと自ずとBBKになるんですがアレは吸気管はフレア系になっています。1/4フレアがどう見てもPT1/4より細いのでかなーり危険な香りです。たぶん第1部で他の人の記事を見て「計算と全然チゲェ!!」の最大の要因はこの配管径(配管抵抗)によるものだと思われます。ご注意を。

以上、第2部でした。第3部は実際に複製してみた!という題目の予定ですが普通にワンフェス後になると思うのでかなり先になると思います。真空脱泡機作るだけなら第2部までの内容で十分だと思うので是非参考にしてください。

以下雑まとめ
・排気速度は計算で求まるので事前に計算すること。ちゃんと合う。※第1部参照
・ポンプの排気口径には注意。8mmで平気だったけど10mm以上あると安心。フレア系は細い(かも)なので要注意。
ポンプ選定時から注意すること。

あ、ちなみに未だに微リークが止まりません。テヘペロ☆
びみょーにリークしてるくらいは複製にはあんま影響しませんね!!真空保管庫としては問題ですが。


私に真空脱泡機が舞い降りた!!(第1部)

脱泡機

どうもかとりです。3D造形をはじめましたがここらで複製もパワーアップしたく真空脱泡を行うことに決めました。もうパーツを細切れにするにはイヤなのだ・・・分割が面倒なのは3Dでも同じなのです。
真空脱泡のメリットはおいおいとして、自宅でやるとそれなりの設備の準備と実験が必要になってきます。今回は真空脱泡の導入に際して調べたことをまとめつつ記事にしてみんなも真空脱泡やろうね☆という目論見です。真空というとよくわからなくて怖いとか難しそうという方が多いと思います。私もプロではないのですが学生時代はよく真空を扱っていたので皆さんの理解の助けになれればいいかと考えています。(他の方の記事をみると特に真空に関する理解が甘い方が多いので)

※最初は軽く、あとになるほど面倒くさくなると思います。わかりやすさのために正確さを欠くこともあると思いますが許してくだち

第一部
・真空脱泡とは?
・真空とは?
・真空について詳しく
・真空脱泡を行うのに必要なもの
・機材選定とそのエッセンス
・予測!実験!結果!!

●真空脱泡とは?
他の記事方も書いてあるので軽めです。真空脱泡機はその名の通り真空にすることで脱泡することです。本記事の脱泡対象はレジンとシリコンです。ガレージキットを作製する際にレジンで複製しますがどうしても気泡が入ります。また、常圧ではレジンが流れ込めない箇所というものができてしまいそれを考慮した型設計は中々難しいものになります。真空脱泡機を使用することでこのような問題を解決します。というわけで
・気泡の削減
・欠けの抑制
・パーツの分割数削減
・型設計の容易化?
などが期待する効果になります。その反面のデメリットとしては
・めんどくさい
・型の痛みが早くなる?
などがあります。後述で詳しく語ることなりますが真空脱泡は生産性が犠牲になります。メリットがその手間を上回らなくてはなりません。簡単なパーツは常圧で流すほうがいいという方も多いみたいです。

●真空とは?
真空と想像するとなにもないとかを想像しますね。そういう空間を作るために真空ポンプで箱の中の空気を取り出します。ただし本当に何もない完全な真空(絶対真空)を作ることは不可能だと言われています。
じゃあどこから真空なの?という問題が発生します。そこで出てくる概念が”真空度”であり、真空度を測定するのが真空計です。真空度は真空の度合いです。これがややこしいのです!まず面倒なのが単位で色々あります。Pa(パスカル),Torr(トル),mbar(ミリバール)など・・・現在の日本ではPaを使用します。Torr表記のものもグーグル先生で調べれば換算してくれるのでPa基準で考えましょう。まぁざっくり1Torr ≒ 100Pa です。
 次に面倒なのが基準点のとり方です。大気圧、つまり海抜0メートルでの圧力を0とするか絶対圧力を基準とするか(絶対真空を0とする)があります。
本記事では絶対圧力基準でお話をします。この場合大気圧は約100kPaになります。一応説明するとkはキロで10^3 = 10*10*10 = 1000です。
よって大気圧は 100*10^3 = 10^5 = 0.1 MPaです。Mはメガで10^6です。ここ大事ですので理解してください!

ここで真空計を御覧ください。
ブルドン管真空計
これは安くてよく見るブルドン管真空計です。ガレージキットの真空脱泡を行う場合はこれで十分です。ちなみにブルドン管は気体の組成に指示値が影響されないのでむしろ適してるともいえるらしいです。組成が変わるというのは溶剤の影響です。さて、これは左回りにものになります。地上では0を指し示すのでこの圧力計は大気圧を0としています。真空を引くと針が左に回り、振り切れると大気圧(0.1MPa) -0.1MPa ≒ 0 Pa になったね。とわかります。え?0Paって無理でしょ?と思ったアナタ、正解です。雑に言うとこれは安くて大雑把な計測装置です。もっと精密な真空度を知る場合は他の真空計を使用しますがそれはまぁ別のお話となります。でも実際どのくらいの真空度までイケるの?と思われるでしょうがそれはポンプの性能と箱の性能に依存します。

●真空について詳しく
真空度についての図が以下の通りです!と、言いたかったんですが作った図をロストしました。悲しす・・・

低真空 10^5Pa~10^2Pa
中真空 10^2Pa~10^-1Pa
高真空 10^-1Pa~10^-5Pa
超高真空 10^-5Pa~10^-8Pa
10^0 = 1. 10^-1 = 0.1. 10^-2 = 0.01です。

真空脱泡で使用する真空は低真空~中真空です。これ以上の真空を高真空、超高真空などと呼びます。半導体製造装置などは超高真空などを使います。超高真空を作る方法でオーソドックスなのはまずロータリーポンプやドライポンプなどの粗引きポンプで中真空程度まで引きます。次にターボ分子ポンプで超高真空までにもっていきます。ターボ分子の排気側には粗引きポンプを繋ぎます。真空容器がしょぼいとリーク(漏れ)がおこります。漏れというより外部からの空気の流入なんですが多分真空が漏れるといった概念です。あと、高真空だとチャンバーからの微量なガスの影響もあります。(※金属表面に吸着した気体分子など)昔使ったロードロックとか金属で厚みが3cmとかありました。対物ライフルも防げそうなレベル!!!

話変わりますがたまに、「ブルドン真空計が振り切れなったから真空引けなかった・・・・」なんて方がいますが大間違いもいいところです。そもそもちょっとでも排気したら真空です。低真空ですけど。「分類上は真空だけど真空じゃない」←オレオレ真空論なんて知らん。みたいにトンチンカンな事言うとツッコまれてしまいますのでご注意を。真空(-0.1Mpa)にするっていう表現すごい気になる・・・で、実際レジンの真空脱泡で必要な真空度はどの程度なの?という疑問が出てきます。これについては少なくとも私は『分からない』です。調べるとほとんどの方が「真空計回った!!ヨシ!!」なレベルで語っているので到達真空度が複製にどのような影響を与えているか不明です。到達真空度が低いと欠けるかもよ☆程度です。まぁまともな真空計高いんですよね・・・あとレジンの真空脱泡はスピード勝負なので細かいこと気にしてる余裕がないのも事実です。しかし、真空度は高くて悪いことは基本的にありません。ポンプの種類によっては20kPa程度(大気圧の1/5)までしか真空を引けないポンプがあり、
???「そんな真空度で大丈夫か?」
?????「大丈夫か、分からない」
という問題が浮上します。なのでこのあとの機材選定では高い真空度を引ける方の機材をおすすめします。

・真空脱泡を行うのに必要なもの
では真空脱泡機に必要なものです。メインは
・真空ポンプ
・真空チャンバー、真空デシケータ、つまるところ真空にする容器です。が、実際にはもっと細かい物が必要になります。

・継手:配管をつなぐものです。色々規格があります。ぶっちゃけ詳しくないです。
・真空ホース:ホースや。馬じゃないので注意。管ですね。
・真空計:ブルドン管真空計のやつを選びましょう。です。
・バルブ:蛇口的なアレ
配管関連は細かくて面倒な上に接続規格次第で色々あるので実際に使用したものはあとでまとめます・・・・

●機材選定とそのエッセンス
さぁきました!難しくてキモになる部分ですのでじっくりいきましょう。

・真空容器
購入するか自作するかの二択になります。自作する人が多いです。丈夫な鍋に穴開けて管通してアクリルの厚板で蓋するのが一般的にようです。詳しくは調べてください。私は運良く新古品の真空デシケータが4.5万(定価28万)で手に入ったのでそれを使用します。ちぇっちぇる~~~ん!!大切なのは大きさです。大きいと真空を引くのに時間がかかります。レジン硬化までに真空引き&大気開放をする必要があります。これが大きな問題でスピード勝負になるので下手に大きい容器を使用すると固まるまでに真空が引けない・・・という現象がおこります。が、大きくても発泡スチロールなどで詰め物すれば実行容積は減らせます。これは重要なことなので覚えておきましょう。
あと、最近はBRIAN & DANYというメーカーが真空容器をAmazonで販売しているそうです。自作するよりこっちのが楽で性能がでるかもしれません。
お値段も1.5万と下手したら自作以下なのでいいかもです。

・真空ポンプ
いくつか種類があります。
・ロータリーポンプ
・ドライポンプ(ダイアフラム式など色々)

おすすめはロータリーポンプです。前述しましたがロータリーポンプは一般的にドライポンプより到達真空度が高いです。
ロータリーポンプのいいところは
・安い
・高い真空度が得やすい
というのがあります。逆にデメリットは
・オイル対策が必要
となります。何も対策しないとポンプの排気口から油のミストがぶちまかれて部屋がオイリーになります。その対策として排気口にオイルミストトラップをつける、ポンプの排気口から管を伸ばして外につなげるなどあります。

さて、おすすめしなかったドライポンプです。油を使用しないのでドライポンプといいます。これのメリットは
・オイル対策不要
となります。デメリットは
・到達真空度が低い(ことが多い)
・若干高い
となります。ネックなのが到達真空度です。これが低いことの影響が不明なのでロータリーポンプをおすすめします。

・真空ポンプの性能
気にするべきパラメータは以下のものです。
・排気速度
・排気速度・圧力 曲線
・到達真空度

 到達真空度はドライポンプを使用する場合かなり差があるので注意してください。ロータリーポンプの場合大抵1桁Pa程度までの能力はあります。1kPaまで引ければ十分かと思うのでロータリーポンプならあまり気にしなくていいはずです。
 前述もしましたがレジン複製の真空脱泡はスピード勝負です。~60s程度で真空を引く必要があります。なので排気速度が極めて重要になります。また、ポンプは基本的に真空度が高まるにつれて排気速度が落ちます。これをグラフ化したのが排気速度・圧力 曲線です。ホビー向けだと公開されてなかったりしますがロータリーポンプはどうやら排気速度低下は10%以内に収まりそう?ドライポンプはえげつないほどに排気速度が落ちたりします。ドライポンプの場合は要注意です。

・真空ポンプの選定
というわけで真空ポンプの選定は
1. 目標到達真空度を決める
2. 目標到達真空度へ達するまでの許容時間を決める
3. 真空容器の容積を決める
4. 到達真空度、容積、所要時間、から必要な排気速度を算出する。
といった手順になります。排気速度が早いほどポンプは大型で高価になります。お財布と相談してなので容積を減らしたりして再検討したりすることになると思います。というわけで決めていきましょう

1. 真空度は1000Paを目標とする
2. 30~60sです。
3. 私が購入した真空デシケータの容積は48Lです。デカすぎるので詰め物して少なくとも半分以下にするとして20Lとします。
4. さぁ計算だ。
グーグル先生で[真空 排気速度 計算]
と調べるといくつかサイトが出てきます。アルバックのHPがおすすめです。2021/02/20現在では圧力・排気速度 曲線が一定ではないドライポンプを使用した際の計算がのっています。曲線でも分割して足し合わせることで概算してます。賢い。

エクセルでシートを作ると楽です。
以下の図のようなシートを作りました。
排気速度計算
式は =($B$4/C8)*2.303*LOG(A8/B8) です。=> (容積[L]/排気速度[L/m])*2.303*LOG(初期圧力[Pa]/到達圧力[Pa])
これは100kPaから90kPaまでの時間、90kPaから80kPaまでの時間・・・・と計算して足し合わせています。
ちなみにこの計算式は200Pa程度まで有効だそうです。

他の方の真空脱泡機に関する記事を調べると排気速度に関しては150L/m程度は欲しいと言われています。また、75L/mだけど足りなかったなどとかも見ました。

20Lで140L/mの場合10kPaまで20s,1kPaまで41s,100Paまで64sでした。なるほど150L/m程度欲しいというのは妥当ですね。因みに排気速度が全圧力領域で一定とした場合、圧力を1/10にする時間は一定になります。
つまり、100kPa -> 10kPa ,10kPa -> 1kPa , 1kPa -> 100Pa の所要時間が等しくなります。※これはあくまで概算です。ブルドン管圧力計の場合1kPaまでいけば振り切れてるように見えると思います。
また、ブルドン管も精度のランクがありますが、そこそこのでも端精度(針の指す端っこのこと)での精度は±2.4%FS = ±2.4kPaとなります。さらに安いのだと適当だと思うので「振り切れた!」が如何にあまり意味のない情報かがお分かりいただけるかと思います。

さてさて、先程は140L/mでしたがこれが70L/mだと倍かかるので1kPa到達でも82sです。120s硬化レジンだともうかなり厳しそうなのが分かります。です。実際にはレジン混合、型への注入、容器への配置、真空引きまでで慣れても30sはかかりそうです。そこからMAX60sの真空引き、からの大気開放+待機時間込で30s。ここまで2分です。真空引きまで1分かかるとすると2.5分です。夏場は結構厳しそうですね・・・・おとなしく180sレジンを選びましょう。

容積を半分位すれば真空引きの早さは倍になります。ポンプの排気速度を倍にしても同じく倍速になります。お財布に優しいのは間違いなく前者です。なので容積削減のために詰め物をするのはかなり効率的だと言えます。まぁ普通はアホみたいに大きい容器なんて買わないのですが、鍋でも無駄なエリアは詰めたほうがいいです。というわけでおおよそ150L/mのロータリーポンプを調達すれば(計算上は)問題なさそうです。
容器は20L位のを用意して必要に応じて実行容積を削減しましょう。まぁ私は48Lの大型真空デシケータを買いましたが・・・・デシケータは四角形なので容積削減も楽ですしシリコン型作製時にも使えるのでいいですよ!ただしアクリル製のデシケータだと有機溶剤耐性が低いのでフィルム貼ったりコーティングしたりしたほうがいいかもです。私のは塩ビ製で耐薬品仕様とのことですが対策はします。最大の問題はクソ高いことですけどね~ちぇっちぇる~~~ん!!

さて、あくまでこれは理論値です。実測は第二部で行います。

私の機材は
デシケータ:V-3P(48L)
ポンプ:エドワーズ RV8
です。ポンプはヤフオクで落としました。わりと状態が良かったです。設計排気速度 162L/m ,実行排気速度 141.7L/m です。実行排気速度はどうやら配管抵抗を考慮した値みたいですね。

●予測!
上記の理論値と結果は一致するのか!!なんか調べると 10Lの空鍋を引くのにBB-260C(170L/m)で1m程度かかる方もいるそうです。これは上記理論計算だと1kPaまで17sです。全然チゲぇ!!!チゲ鍋!!!
100Paまでとしても34sじゃい!!!理論値±20%に入るのが正しいと仮定した場合にここまで時間がかかる原因として考えられるのは
・ホビー向け?ポンプなので高真空状態での性能低下が大きい
・実はカタログスペックの性能が出てない(スペック詐欺
・自作鍋容器なのでリークが発生している
・配管が細く、配管抵抗が増加して実行排気速度が大幅に低下している
辺りですね。
私が購入したエドワーズ RV8は定価25万位します。また、半導体などではULVAC,ハイファーetc・・・・などのポンプが使用されており、値段も高価です。BB-260Cは5万位で買えるので安くないけど安いほうです。なのでカタログスペックが本当にでてるの?とか色々気になっちゃいます。が、おそらくここまで大きくズレる最大の要因はチャンバーだと思います。リークしてますねおそらく。Oリングはキレイに維持する必要があります。蓋もキレイに。自作チャンバーはその辺厳しそうですね・・・・次点で配管の細さです。配管抵抗を含む理論計算はめんどいですが要は配管は短くて太いほど良いということです。細いストローで吸うのきついっすってお話。です。

また、実際に複製する場合は
・有機溶剤の揮発が真空度悪化の要因として働く
ってのもあるかもです。

さてさてさておきというわけで自分の環境で実験です。容積削減すると厳密な実行体積がわからなくなるのでそのままで実験する予定です。
デシケータ:V-3P(48L)
ポンプ:エドワーズ RV8

10kPaまで47s.
1kPaまで98sというのが予測値です。
ポンプの劣化、配管抵抗、チャンバーの性能などを加味して+20%までになってほしいな・・・というのが予想であり願望とします。

・終わりに
第一部はここまでです。
第二部では実際に組んだ詳細を記します。そして組んだ上での排気速度の検証を行います。思ったより重い記事になりましたが参考になりましたか?真空脱泡機が舞い降りましたか?ポンプとデシケータは本当に思いついて衝動的に買ったのでまさに舞い降りた感じでした。


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